信念(医療理念)
「信念は体験によって作られ、行動は信念によって支配される。」脳研究の方の言葉です。
医療理念が経営には必須ということを体験的に私は知っています。
成功しているクリニックの院長で「うちは医療理念はないよ」といわれるクリニックの場合でも院長の考えや信条はちゃんとスタッフに伝わっているようです。
新規開業の採用をして患者さんへの対応が素晴らしい人がいると興味がわいてきて、話を聞いてみたりします。
そこでよくでてくるのが、「前働いていたクリニックの院長の考えがそうだったから」とそれが当たり前のように自然にレスポンス(早いレスポンスの時は本人の中で浸透している感じがします)が返ってきます。
その人は受付事務の方だったのですが、初めて医療機関(クリニック)で働いたのが上司として院長がいるクリニックだったそうです。
そしてその院長の考え方や行動などを見ていて、院長を尊敬するようになり、その院長の考え方を理解して仕事をするようになっていったそうです。
尊敬する院長に影響を受けて、尊敬する院長の考え方を真似してという流れなのですが、実際にその方の動きや、やっていることを見ていると、前の院長の理念が体に染み込んでいるような印象を受けました。
正直に告白しますとコンサルをしていて、院長の医療理念をどうやってクリニックに、スタッフに浸透させるかいろいろ悩んでいた時期があります。
今では仕組みも考えやっているのですが(まだ100%まではいっていません。上手くいっているクリニックは多くありますが、院長ご自身の力量が多分に反映されていると思っています。)まだ暗中模索していた当時、脳研究の方の本を読む機会がありました。
当時、医療理念浸透や患者さんへの対応もそうなんですが、マインドセットが非常に大切と私自身思っていました。
しかし、人の頭の中を変えることは難しいなということも感じていました。
その脳研究の方の本には、苦手意識を払拭する方法の一つは「体験」とありました。つまり、行動を積み重ねることだそうです。
「体験によって信念は作られる。」
その信念を一言で表現すると「思い込み」に近いそうです。しかし、強い思い込み(信念)ができると、今度は信念が行動を支配するという話でした。
これは使えるかもと。
人は経験したことが価値観になるのは身をもって知っているのでなるほどなと思いました。
プログラム化できるかもと思った瞬間です。
また、アメリカのアンソニー・ロビンスという世界的なコーチがいます。
クリントン大統領や、テニスのアガシなどのコーチングをしてきた人だそうです。
アンソニーは、「成功者になりたかったら、成功者のモデリングをしなさい」と言っています。
そして成功者の理念を把握したら「どんな行動をとればその理念が手にはいるかを考えなさい」と言っています。
そして、一度信念が出来れば信念(思い込み)はなかなか変わらないそうです。
院長が医療理念に基づいたビジョンを示し、身をもって行動し信念(医療理念)が本当の意味で出来上がり、その信念のある行動が現実を作り出す。
と当時の私は思いました。
ただ院長が自分が行う行動と医療理念という信念を言動一致させる必要があります。逆に医療理念と先生ご自身の行動が一致しないのであれば、大きな副作用が産まれ、逆効果になります。
先生ご自身が過去働いてこられた上司の方を思い出してみてください。
その上司の方が言っている信念とやっていることが同じであれば、その上司についていけたと思いますが、逆にその上司が素晴らしいことを言っていても実際の行動が言っていることとは違う行動をされていたら先生はその上司についていきたいと思われましたか?
仕事だからついていかざるを得なかったということはあるかもしれません。しかし、今はクリニックで働く人の価値観も多様化して変わってきています。
上司である院長が言っていることとやっていることが言動一致していないと人はついてこなくなります。
昔は上司の人が言っていることに従うとか守ることが当たり前の雰囲気がありましたが、今は価値観が多様化して院長の価値観とスタッフの価値観の違いが以前よりもかなり大きくなってきていると感じます。
スタッフの方が自分の価値観と違う、もしくはその職場では自分が正しいと思っていることと違うと思ってしまった場合、自分を成長させ変化していきたいという方もいらっしゃいますが、そういった方は比率的には少ないので、自分を変えるのではなく、環境を変えたいということで優先順位として楽な方、職場環境を変えるという方向に向かう印象を持っています。
自分を変えずに環境を変えた方が楽ですよね。先生が働いているクリニックの環境を一スタッフが変化させるのは非常に難しいことだと思います。
なかには他のスタッフを巻き込んで足を引っ張るスタッフがいたり、転職を繰り返して自分の環境を変えていくスタッフなどもいます。
結果そのスタッフの人も成長しないため、自分の価値観と全く一致する職場というものが本当にあるのかどうか、患者さんのためとか社会のためといったような価値観をそのスタッフが持っていたらまだ合致するところはあると思いますが、自分さえよければ良いという独りよがりな価値観で環境を変えていってもまず意味がありません。
そういった方を採用時に見極めることができるかどうか、またそういった人を一緒に仕事をしていくことで価値観を変化させることができるかどうか。
実際変化させることができるだけの手本を先生ご自身が毎日目の前で理念と行動を言動一致させ見せていくことができるかどうか。
そしてその理念に基づいた体験をスタッフ一人ひとりに体感してもらうことができるのか。
気が長い話になるかもしれませんが、これが出来上がった後は、ものすごく職場の雰囲気もよくなります。ただ一番良いのは先生の価値観と似たようなスタッフを面接採用時に見極めることでもあります。
先生ご自身も過去職場で一緒に働いてきたスタッフで、仕事観が先生と似ているスタッフは非常に仕事がやりやすかったのではないでしょうか。逆に仕事観や信念が全く相容れないスタッフの場合、仕事がやり難くなった経験はないでしょうか?
実際職場の中で、違う異物のような信念を持ったスタッフがいると、仕事の流れは悪くなる印象があります。
そして優しい院長ほど全員のスタッフを平等に扱おうとするため、平等に扱えば扱うほど本当に頑張っている人は馬鹿馬鹿しくなり辞めていってしまう。もしくはもっと手を抜いて良いのだと楽な方に流れ、仕事のレベルが落ちていくことが多いです。
価値観に合う人を採用する、またご自身の価値観に他のスタッフを巻き込んでいく。そのためには先生ご自身が本当に信じ切って言動一致できる理念を作っていかなければなりません。
先生ご自身がそういった体験を身をもって行動し手本を見せていく必要があるのかなと思います。
実際私のコンサル先でもこの理念を身をもって行動されているところは、スタッフの教育も地域のブランディングやマーケティングもぶれずに一貫性があるため人もついてきますし、患者さんや地域の評価もその一貫性に信頼を持って積み上がってきています。
それほど信念や医療理念は重要だと捉えています。
そしてもう一つ、その信念や医療理念に重要なことがあります。
先生の信念や医療理念が社会的につまり客観的に見て評価してもらったり、そうだよねと応援してもらったりするような信念や医療理念になっているかどうかが非常に重要になります。
新型コロナ以降、患者さんや地域の人たちは非常にストレスを抱えている人が増えている印象です。その中でストレスを抱えている人でも応援できるような信念、医療理念なのか逆に反発を生むような独りよがりの信念や医療理念なのか、そこは未来への大きな分かれ道になるかと思います。