少し長いのですが、私の約20年のコンサル経験の中での、クリニック経営や増患対策などの大切な気づきもありますので、よろしければお付き合いお願いします。
2005年秋に一部上場の医療コンサル会社、総合メディカル株式会社を退職し、医院開業のコンサルとしてOSC(オープン・サポート・センター)と医院開業に役立つ情報発信のサイト「医院開業戦略コンサルタント小副川」を立ち上げました。
総合メディカルは1990年代までは、九州・中四国までをエリアとした医療専門のコンサルタント会社でした。
2000年前後だったと思いますが、当時オリックスの関連会社であった病院ベットサイドのレンタルテレビの会社オリックスメディアサプライという会社をM&Aを買収し、そこから北は北海道、南は沖縄までの日本全国に支店がある会社になった医療専門のコンサル会社です。
2001年春に総合メディカル内で、継承開業を積極的にコンサルしていくという専門のプロジェクトが社内で立ち上がりました。DtoDというプロジェクトです(今でも総合メディカルはやっています)。
継承開業という既存の患者さんをそのまま引き継ぎ開業する前に、近くの病院での勤務での患者さんをさらに引き連れて、かつプラスアルファーで継承での患者さんの継承もプラスできたら理想的な開業のコンサルが出来るのではという発想でした。
当時第一次世界大戦や第二次世界大戦時に日本国内で大量に生み出された軍医から開業医になられた先生方が全国で何万人といるなかでのそのもと軍医だった開業医の先生方の引退の時期のタイミングが目の前に来ていた時期です。
当時社内でおきた継承プロジェクトは、「Drの方が病院に転職」⇒「転職先の病院で診ていた患者さんを引き連れての開業医Drの継承開業」を目指すということで「DtoD」というプロジェクト名になりました。
そして、社内でプロジェクト推進のメンバーが選抜され、執行役員1名、社内コンサルから3名選ばれ、その「DtoD」プロジェクトが発足されました。私はその「DtoD」プロジェクトに選ばれた社内コンサル3名のうちの一人です。
2001年「DtoD」のプロジェクトの中での私の担当は、継承物件集めや、継承物件リサーチ、継承開業の担当になりました。
(残り2名のコンサルは、勤務医の方の登録担当、転職病院の登録担当に担当分けされました)
約半年の立ち上げプロジェクトである程度の道筋が見えてきたころ、会社から辞令を受け、支社の大阪に転勤になりました。中部近畿地区統括本部といって、名古屋支店、北陸支店、大阪支店、神戸支店のエリアを管轄する管理部門の開業コンサル部門の担当になりました。
当時名古屋支店には、開業コンサルができる支店長がいたため、名古屋は継承物件リサーチを中心に、北陸(富山、石川、福井)、大阪支店管轄(京都、滋賀、大阪、奈良、和歌山)、神戸支店は、病院ベットサイドテレビの営業マンだった社員にクリニックの開業コンサルをOJT(やって見せて、教えるやり方で)で教えていました。
特に総合メディカルの関西立ち上げ時の、新規開業クリニックは私のコンサル先の積み重ねが数多くあります。関西に本部がある中部近畿地区統括本部に約5年近くいたのでコンサルの数的にはかなりやったと思います。
数年経つと、スタッフもある程度そだってくれ、物件探しや、物件リサーチのマーケティング的なことのある程度前半部分をいっしょに地域担当の社員とコンサルを実施し、後々の開設届などの書類作成などは地域担当にまかせるという形に移行していきました。
ただ一番、開業される先生方が気にされているのが、開業場所の選定なので、その部分は地域担当の社員といっしょに頑張ってやっていました。最盛期は月8件の物件決定やコンサル契約をいただいていた時期もあります。
当時は個人情報保護法がまだない時代だったこともあり、継承開業をされる先生といっしょに、継承先の診療所のカルテを、全部ひっくり返して、カルテを基にマーケティング分析をやっていました。患者さんの住所から地図にプロットしていくことは勿論、年齢構成、性別分析、疾患傾向分析などカルテから地域分析をやっていきました。
このような手間暇がかかって生産性が悪いことをやっていたのは、私の性格的(理由をきちんと把握して仕事をしたいという性格)な部分もある一方で、継承開業を関西で徹底的に始め出したということもあったかと思います。
今でも憶えているのですが、大阪に引っ越したばかりの時、開業希望の大阪在住のDrの方と初回面談して話をしていくなかで、私が過去大阪に住んだこともなく、地理に疎いというお話を正直にしました。
「大阪に住んだこともないのに、開業コンサルが本当に出来るのか?」というお言葉でした。
住んだこともない地域でも、私は以前は店舗出店系の開発・マーケティングをやっていました。今から25年以上前の話です。店舗系の立地分析やマーケティングはその当時から多変量解析をやっていました。
全国展開をやる店舗の場合、商品、マニュアル、設計、商品陳列など統一されていますし、商品の売れ筋も当時からバーコードを拾うPOSシステムから分析が出来たのです。
様々な角度から統計分析が出来るので、かなりの確率で店舗売上がだせました。
そして、一度医療コンサルといっしょにクリニックの開業のお手伝いをした時に、医療コンサルのマーケティングが多変量解析や店舗系の分析モデルの域に達していないことを感じたのでした。その当時POSシステムからのデータを基に多変量解析が出来る時代が最先端としては来ていましたので、医療でもそれが出来るのではと思ってしまったのです。
その後総合メディカルが当時1300以上の開業支援の実績をもっていたこともあり、総合メディカルに転職しました。そこでわかったことは、開業される先生やスタッフの人的要因(知識や経験、性格など)が患者数やマーケティングに及ぼす影響が非常に大きいことがわかりました。そのためデータの客観性が取れず、多変量解析を医療のマーケティングに落とし込むことはできませんでした。
当時も今と変わらず、診療科目ごと診療圏の範囲を決定し、その範囲内の年齢別人口に、疾患ごとの県別受療率を掛け合わせて、診療圏調査をしていました。当時と今が変わってきているのは、診療圏調査専用ソフトが充実し、プレゼン資料が増え、綺麗なプレゼン資料が出来上がるようになったことくらいかなとは思います。
綺麗には見えますが、実態の中身のリサーチ方法や、アウトプットの推定患者数の算出については、以前と同じです。
私としては、多変量解析などがやりたくて、総合メディカルに入ったこともあり、診療圏調査の精度を上げるテストを趣味のように当時やっていました。
確率の数式を、診療圏の範囲を細分化して落とし込むやり方です。範囲の中の「○○町○丁目」ごとの想定患者数を出して、その「○○町○丁目」から開業予定地までの距離(もしくは時間)と、「○○町○丁目」から競合クリニックまでの距離(もしくは時間)を算出、競合の仮説での評価分析、自院の地域での将来の評価予想をしていき、自院の評価数値が100点満点中、20点(開業当初)だったら一日外来何人、50点に上がったら一日外来何人、80点なら、100点ならというように確率方式でマーケティングをやっていました。
これを細かくやっていくことと、開業後の実際のクリニックの状況を見ていくと、診療圏よりも、地域の患者さんたちに高く評価されることの方が重要ということが見えてきます。
特に今のようにクリニックが増えている時代になると、開業した当初は診療圏調査でいい数字が出ても、数年後には新しいクリニックが出て来て、診療圏の数字が開業前の想定の半分になったというようなことが現実多々でてきています。
何十年も前は、医師会を通じて新規に開業される方の邪魔をして開業を阻止されているところもありましたが、ある医師会と新規開業のDrとの裁判で医師会が負けた判例が出てから、抑止力が極端に弱まりました。
診療圏調査より、地域評価の方が重要ということを理解したこともあり、かつクリニックは院長だけでなく、スタッフも含めた魅力が非常に重要ということも理解した上でコンサルタントしてやるべきことが大きく変わってきたと思っています。
私自身コンサルタントとして独立して13年目に入りますが、200件弱新規のクリニックの開業のコンサルを1から10までのプロセスを経てやっています。
コンサルの中には、模擬診の時、少しお手伝いをした。挨拶に行った時に、一言、二言アドバイスしたことも含め、コンサル件数に含めるコンサルもいるのを知っています。私の場合それを含めると(セミナー参加者や「医院開業戦略コンサルタント小副川」の登録Drを含めると)3~4数千人以上のDRに情報発信しているかと思います。
また、私が他のコンサルと違う経験をしているのは、開業後のコンサルをやっていることと、私のところOSC自身でチラシやホームページの事業もやっており、その結果をデータなりで分析してきた(開業後もコンサルしているクリニックでのデータなど)ことです。
数字を分析していると、時代の変化や、地域変化も見えてきます。
ひとつ例を書くと、野立て看板の反応率が昔と比較して落ちています。
これは想定される理由は複数ありますが、その中のいくつかをお話します。
ひとつは、野立て看板の数が増えすぎて、目に留まるチャンス(確率)が以前より減ったということです。
あと場所がら、看板数の上限がある駅看板なども、最近はスマホをいつも触る人が多くいることもあり、駅の看板に意識がいって見る回数が圧倒的に減っている感じです。
当たり前のことしか起こっていません。ただ野立て看板がいらないということにはなりません。
ホームページのグーグルやヤフーの検索エンジンの仕組が、「○○クリニック(指名検索)」というような具体的な指名検索が多いクリニックのホームページを上位に表示している傾向があるのです。
クリニック名を最初から知っている人は、チラシを見た人以外はほとんどいないので、あとは看板などの広告を出しているところが有利になります。
グーグルやヤフーが実体経済を基に検索エンジンの上位表示アルゴリズムを修正し出しているのを感じます。
まだほとんどの開業コンサルが気づいていない、見えていないことは数多くあります。
グーグルやヤフーの検索エンジンの考え方から逆算してマーケティングを組み立てる開業コンサルまだそれほど多くありません。ホームページ業者を紹介するだけだからです。
そのホームページ業者もデザイン屋であっても、マーケティングのことを理解しているホームページ業者は多くありません。例えばほとんどの内視鏡クリニックのホームページのキーワードは、「胃 内視鏡」といったキーワードで作られていますが、「胃 内視鏡」のキーワードは「胃カメラ」キーワードの月検索数(数年前調査しました)の30%程度の検索数、かつ検索関連のキーワードを詳しく見ていくと、組み合わせが「学会」といった医療関係者が多いことを考えると、実際の患者さんに来てもらう確率をキーワード設定一つで80~90%程度逃している可能性もあるのです。
私のコンサル先では毎日新患が1つのホームページがから2~3人来ているクリニックがけっこうあります。いろいろな確率を数字で上げることをやっているからです。それをキーワードの選択を誤ると、というかあやまっているクリニックは3~10日に1人しかホームページから新患が来ないというクリニックも多々ありますし、月ホームページから新患0人のクリニックもあると聞いています。
ホームページは投資です、コンサル先でホームページが新患ルートのメインで1.5億の売上をオープン2~3年で上げているところもありますが、やっていることがまったく違います。
開業後のコンサルをやっていないコンサルは、開業前のことしか知りませんし、開業前にやることはまだオープンしていない状況なので、経営のことをそばで見ていないことになります。
そして、患者さんが来ないことを院長から相談を受けると「2~3年、患者さんを一人一人大切に診ていけば、必ず患者さんは増えますよ」と大昔の話を今でもやるコンサルが多いのです。
昔の時代は
○○
と2つくらいしか競合がない地域に、もう1件クリニックが出来て
○○○
程度の時代は、2~3年誠実に開業されてから頑張れば、患者さんは増えていっていました。
患者さんが、どこに行こうか、選択する意志がまだあったからです。
しかし、今の時代
○○○○○○
○○○○○○
のところに、もう1件クリニックが出来
○○○○○○
○○○○○○
の時代、医療の素人である患者さんは、どこを選べばいいか分かりません。
選択肢が多すぎると、医療法で情報が限られている中、素人患者さんが自分の能力で選択することは不可能に近づいていきます。
そうなると素人である地域の患者さんの行動はどういう傾向になっていくか。
心理学の実験でも証明されていますが、地域でNO1を探す傾向が出てくるのです。
日本で一番高い山は富士山とだれも即答できますが、日本で7番目に高い山ははほとんどの人は知らないですし、聞く人もいないと思います。
地域の人も「いい内科はどこなの?」と聞かれれば、聞かれた人は、地域でNO1と本人が思うクリニックが頭の中に浮かんでるはずです。
そういう時代になると、地域でNO1クリニックが一人勝ちをして、2位以下との差がどんどん広がります。
「2~3年患者さんひとりひとりを誠実に診ていって、3年後も低空飛行の患者数」のクリニックが出てきているのです。
それでも「2~3年、患者さんを一人一人大切に診ていけば、必ず患者さんは増えますよ」と大昔の話を今でもやるコンサルを、人柄がいいから信じてしまう先生がまだいらっしゃるのです。
推計では、おそらくその言葉を信じ、2~3年辛抱すればの言葉を信じ開業される方も方が、開業前ロジカルな戦略や経営行動計画(融資のためのコンサルや会計事務所がつくる、事業計画ではなく、行動計画表です)をたて自信を持って開業される方は、まだまだ少ないのです。
開業後のコンサルといっても、資金、収支の分析表を提示してくるだけでは未来は変わりません。分析は出来ても、分析からの戦略や戦術構築が出来るコンサルがまだまだ少ないのが現実です。
一つはいまだ時代の変化に気づいていないコンサルがまだ多いからです。
真面目なコンサルの方は沢山います。誠実なコンサルの方もたくさんいらっしゃいます。
しかし、時代の変化についていくのであれば、新しい知識やノウハウを知っている方と、知らない方の差が、実はどんどん開いていっている時代でもあるのです。