クリニック(医院)開業 失敗①
医院開業で注意すべき点
目次・・・クリニック(医院)の失敗とは
■プロローグ
①放漫経営
②黒字倒産の理由
③財務体質を理解していないことによる失敗
④設計の失敗
⑤スタッフの能力の問題
【コンサルタント小副川】
一部上場のコンサル会社から平成17年に独立し、OSCを創業。
継承開業68件、新規開業210件以上をコンサルしてきている。
出版物に『リーダーのための相性分析入門』がある。
コンサル先のDrの先生も、出版されているDrの方が複数
■クリニック(医院)の失敗とは
医師として患者さんのことを考えた良質な医療にだけ専念したい。ただ開業で失敗はしたくない。優秀な先輩が開業したがはやりの感染症で経営が厳しいという噂を聞いた。
自分は開業で失敗しないだろうか。開業で失敗したら家族はどうなってしまうのか。
学費が払えず子供の将来を棒にふるようなことは絶対したくない…
開業したいが失敗して今の生活を壊し、家族をまきこむようなことはしたくない。
開業で失敗して昔の職場や元の同僚に笑われるのだけは絶対いやだ・・・
心の声。
だけど、このまま金のためだけの不本意な仕事をするのはもういやだ
だけど、自分が大きな借金を抱え失敗せずやっていけるのか不安だ
開業はしたいけれども絶対失敗をしたくないという思いをお持ちなのではないでしょうか。
事業なので今回のはやりの感染症のように想定していないことが起きることもあり、失敗のリスクがゼロというのはないと思いますが、限りなく論理的に失敗のリスクを下げていくことは可能です。
そのためにはどういう失敗があって、その失敗を避けるためにはどのようなことを考えないといけないのかという視点が重要になってきます。
①放漫経営
クリニック(医院)など医療施設独特の倒産があると言われる方もいらっしゃいます。
それはどういう倒産かというと、クリニックの倒産はほかの業界の倒産に比べ、黒字倒産が多いのです。黒字なのに倒産する。放漫経営の最たるものではないでしょうか。
なぜこのようなことが起きるかというと、院長が経営の知識や財務の知識がないことから起きることが多いのです。
②黒字倒産の理由
財務体質を理解していないことの一つとして、クリニックは建物や内装、医療機器など多くの設備投資をやります。
※減価償却費とは
投資したものを経費化できないと投資したものが、例えば、医療機械が古くなったらまた新しく買わないといけない、そのお金を事業なので続けていくために再投資できるように国が税制上認めたものです。
投資したものを耐用年数といって電気設備だと15年くらい、医療機械ですと7年くらい。特別償却があるものはもっと短くなったりするのですが、毎年経費で落とせます。
最初にどかっと使っているけれども、毎年減価償却があるということは、実際そのお金はその年に使っていなくても最初に出したお金を内部留保するために経費として認めてくれるので、売り上げから経費を引くときの一部として、使っていないけれども経費として入れ込むことができます。
つまり、税引き後のお金の残ったお金に減価償却のお金も残っているという形になります。
この仕組みをきちんと理解している方と理解されていない方がいらっしゃいます。
例えば、お金を使うものは性格が反映されます。一度贅沢をしたら元に戻れなくなった経験がありませんか?毎年使うお金の使い方、金額がパターン化されている方ほど注意が必要です。
経営が回っていると思っていても減価償却費があるから税金が少なくて回っているケースもあるのです。
例えば、医療機械の減価償却が7年間で終わって8年目になると減価償却がなくなるため、財務上は利益が増えます。財務上利益が増えると税金が増えます。
患者数も売り上げが同じであっても税金が増えるので財務体質が苦しくなります。
税金が増えて残り資金が少なくなるということを知らずに、お金の使い方を減価償却があるときと同じように行ってしまうと黒字倒産をしてしまう。そのような流れです。
全国で今、医療法人にするクリニックは開業して8年目に医療法人にするクリニックが平均ではないかと言われていますが、その理由は医療機械の減価償却が7年で終わり8年目から税金の負担が増える。このタイミングで税引き前利益が3000万円を越し、節税上医療法人にするクリニックが多いと思われます。
(だから減価償却の知識は頭に置いておいてくださいね。)
③財務体質を理解していないことによる失敗
クリニックの財務体質には特徴もあるのでこちらも理解していただきたいのですが、
クリニックは内装工事や建物への投資・高額な医療機械への投資・その返済やリース料
それと、ドクターや看護師は資格者の集団であるため毎月かかる人件費が高い。
つまり固定費がほかの業界よりも多いと言われています。
逆に薬を外に出す院外薬局が多いため、変動費は少ない。
この固定費と変動費をつきぬけた売り上げから利益が出てきます。
患者さんが多く、収益があがっている開業医の先生ほど税金が大変とかそういったお話をされますが、固定費が高く変動費が少ないということは売り上げが少しでも伸びたらすぐ利益に還元される財務体質であり、売り上げが10%伸びたら利益が2倍になるケースでさえあるのです。
つまり変動費は患者さんが来れば来るほど注射針等お金がかかってしまいますが
固定費を開業時にできるだけ低くコントロールすることで失敗のリスクを大きく下げることができるのです。
患者さんが25人でも黒字になる財務体質と患者さんが40人来ないと黒字にならない財務体質。 同じ開業でも財務体質により内容は全く異なります。
そしてこの損益分岐点を作る財務体質作りは開業前にかなりの部分が決まります。
その一つとして、この財務体質の理解を踏まえ、次は設計の失敗の話をします。
④設計の失敗
クリニックの設計は非常に重要です。
先生もお友達のクリニックを開業前に見に行かれるケースがあると思いますが、同じ患者数なのに、スタッフの人数が2倍とか、ざらにあるのを感じられると思います。
ご本人は気づかれてないケースが多いかと思いますが、その原因は設計上の動線がいいか、悪いかです。
スタッフがひと仕事するのに20歩あるかないといけない職場と、2歩で仕事ができる環境では当然スタッフの必要人数は大きく変わります。
設計士の方の腕によって、スタッフの人数が大きく変わるということは、先生のクリニックの利益体質に大きな影響を及ぼすということになります。
クリニックの家賃に意識がいかれる方は多いのですが、スタッフの人数に意識がいかれる方はまだすくないのですが、家賃より、毎月の人件費の方が金額も大きく、クリニックの経営に対する影響も大きいことがほとんどです。
その原因をつくっているのが、設計上の動線ということを頭に入れておいてください。
⑤スタッフの能力の問題
スタッフの能力によっても、スタッフの人数が大きく変わります。
スタッフ能力差、意識の差によって、人件費が大きく変わるという事です。
仕事を覚える意識がなく、人に質問をしながら仕事をするスタッフを雇用すると、人の時間を使って仕事をするので1人分の仕事を2人でやることになったりします。
当然人件費は大きく上がります。
また、そういう人にかぎって、コミュニケーション能力が高かったりして、人に助けてもらうのがうまかったり、院長に気に入られていたりするケースもあるので、問題を複雑にしたりしています。
そういう人を採用から外すには、その人を採用時の面接時点で見極める必要があります。
また、ミスが多い人もいます。
電子カルテなどは、スピードを速くするより、ミスを減らしたほうが早いケースもあります。
間違いがあると、ぜんぶやり直しになったりするからです。
ミスを無意識に大量発生させてしまう人もいますし、その比率は昔よりも増えている印象です。
そういう人の面接時の見極めも重要と思っていただけたらと思います。