医院開業 準備
医院開業 準備
・開業するかしないかを決める
・家族の5年後、10年後、15年後のライフプラン作り
・情報集め
1.本を読む
2.先輩開業医の話を聞きに行く
3.開業セミナーや相談会に参加する
・退職のタイミング
・コンサルタント選び
・物件探し
- 開業するかしないかを決める
開業にあたって考えることは、まず開業をするかしないかを決めることではないでしょうか。これは出来れば早い段階で考えておかれた方が良いと思います。というのは10数年前ある銀行の方と話をしていて出た話なのですが、銀行には診療報酬が毎月入ってくるので開業医の先生の時系列の推移のデータが数多く存在しています。銀行の医療機関専門の担当者の話なのでエビデンスは高い話だと思いますが、大体開業医の方は60歳を超えたあたりから患者数や売り上げが減ってくる方が多いという話をされていました。
これについては今は少し後ろに伸びているかもしれませんが、後継者がいる方やまだまだ借金が大きく残っている方はもちろん頑張っていると思いますが、60歳以降は売り上げや患者数が徐々に減っていくということを想定すれば、開業するならできるだけ早い時に開業した方が経営的、経済的に恵まれた期間を長くする可能性が高まるのではと思っています。
逆に年齢がいってからの開業ですと借金を返すことが目的になってしまう可能性もあるかもしれません。
そのため開業するのか、それとも開業せずに勤務医のままでいた方がご自身やご家族が幸せなのか、これは開業準備の一番最初の段階でしっかり検討されることをお勧めしています。また検討するためには情報がないと検討もできないと思いますので、情報は数多く集められることをお勧めします。
- 家族の5年後、10年後、15年後のライフプラン作り
開業するにあたって、私自身コンサルタントであり、ファイナンシャルプランナーでもありますので、コンサルする先生方にはライフプランのお話などもさせて頂いています。当社では独自のファイナンシャルプランであるライフプランシートをお渡しして、5年後、10年後、15年後などのお金の計画推移などを作っていただいています。
例えば、ご自身やご家族の年齢、お子さんの教育費が何年後には幾らいるのか、その時のご自身の年齢は何歳なのか、病院勤務の定年は何歳か、給与の値崩れはないのか、など実際の未来のお金におとしてライフプランをお金にからめて目に見えるようにしていきます。
そういったことを見ていくと結婚された年齢が40歳以降だったり、一番下のお子さんが産まれたのがある程度ご自身の年齢がいってからの場合、お子さんが多かったりなど、学費が勤務医をしていると苦しくなることがわかったりするケースもあります。5年後、10年後のことを事前に考えて開業しないのであればそのお金をどうやって貯めていくのか、開業するのであれば収益としてどうやってそのお金を作っていくのか等を綿密に考える必要があります。つまり家族のライフプランから逆算したオリジナルの事業計画を作る必要があります。
- 情報集め
情報集めは非常に重要です。開業して経営者になるということは意思決定が必要になります。物事を決めるには自分自身で責任を負って進んでいかないとなりません。その覚悟がないと自分のクリニックをコントロールすることが出来ません。これは開業後も当然ですが、開業前の一つ一つの意思決定も未来に影響を及ぼします。開業前に決めたことで開業後の経営の損益分岐点の多くが決まってきたりします。
損益分岐点でいくと他のクリニックが黒字であっても損益分岐点が高ければ自分のクリニックは赤字ということもありえますし、逆に他が赤字でも自分のところは黒字ということもあります。
昨今流行りの感染症の影響もあり、開業して3年は赤字を覚悟しましょうという話も一般的にあるようですが、私のところの2020年のコンサル先は損益分岐点を下げて開業されたクリニックなどは緊急事態宣言下でも初月黒字が何件もありました。情報を集めずただ開業するのと、事前準備の情報を集めて開業するのとでは大きく変わってきます。
また医療法人になるのは税引き前利益が3000万円を超すタイミングで医療法人にされるところが多く、平均すると開業後8年で医療法人になるクリニックが多いと言われています。ですが私のコンサル先では緊急事態宣言が出ていた2020年4月オープンのところでも、開業後半年で医療法人設立の準備に入ったところが複数あります。そのような開業をご自身が目指されるためにも情報収集は非常に重要です。
1.本を読む
開業に関する本は今現在、山ほど出ています。開業コンサルタントが書いた本、開業医の先生が書いた本など数多くあります。1、2冊読むだけではなく出来るだけ数多くの本を読まれて、矛盾している点や納得できない、具体的にイメージできない点などを整理しておかれることをお勧めします。情報を集まるだけではなく、考えながら読み進め、納得できない、自分としては矛盾に感じることを集めておいて、その点をご自身が会われるコンサル担当にぶつけて、ご自身の腹に落としていくことが経営者になって自分で判断基準を作る上でも重要だと思います。
理解できない、わからないことを少なくするためにもそういった本の読み方をされることをお勧めします。
2.先輩開業医の話を聞きに行く
リアルな話なのでとても参考になると思いますが、先輩が開業した立地の競合との相対的な関係や先輩が開業された時代背景などもリサーチや分析をして、その上でなぜうまくいったのか、どういうところが良かったのかなど全体像を俯瞰してみる必要があると思います。今後高齢者の自己負担がまた増える場合、高齢者の自己負担がなかった時代から自己負担が増えた時どのように変化したか、患者さんの権利意識がどういう風に高まっていったのかなど心理状態をしっかり把握しておかないと、先輩と同じことをやっても患者さんの感情に対応できなかったりするケースもありますので、時代背景や全体像を把握することは重要です。
自己負担が増えれば増えるほど権利意識は強くなるため、接遇対応は非常に重要になってきます。それであれば接遇の情報も集めた方が良いですし、変化があればそれに対応していかないとなりません。
特に流行りの感染症以降患者さんが減っていったクリニックと、逆に流行りの感染症前よりも患者さんが増えているクリニックが実際に存在します。私のコンサル先でも流行りの感染症前より患者さんが増えているクリニックがたくさんあるのですが、先輩や知り合いの開業医の先生に流行りの感染症前と流行りの感染症後どのように変化したかなどいろいろなことを聞かれて出来るだけ情報を集められると良いと思います。
3.開業セミナーや相談会に参加する
私もたまにセミナーを開くのですが、多い方で開業セミナーに20何件参加されている先生もいました。「20件回りましたが、今日初めて聞く話がたくさんありました」と言って頂けることもあります。知らない情報はたくさんあると思いますので数多くの開業セミナーや相談会に行かれることをお勧めします。
- 退職のタイミング
所属されている医局によって退職までのルールがあるかと思いますので、退職の期間などをしっかり把握され、退職のタイミングを考えられる必要があると思います。
- コンサルタント選び
ご自身の開業後の経営を大きく左右しますので、開業までしかやらないコンサルタントなのか、開業後もずっとやってくれるコンサルタントなのか。まずはそこから検討します。
また、開業後のコンサルで注意が必要なのが、分析はできても開業後の経営指南をしてくれるコンサルタントもいれば、情報を分析して報告だけするコンサルタントもいます。
内容をしっかり把握して、最低でも10社くらいのコンサルタントに会われた方が良いと思います。コンサルタントのノウハウや相性など様々な点を検討して選ばれることが大事だと思います。コンサルタントによってその先に見える景色は大きく変わります。先生の人生のポテンシャルが大きく変わる可能性があります。
- 物件探し
物件探しの準備に入る前に、どの範囲までのエリアで開業するかを決めたり、何を優先するか。自宅から近いことを優先するのか、患者さんがたくさん来てくれて経営が上手くいことを優先するのか。開業される先生一人ひとりにより重要視する点が異なると思います。全てを満たす物件があれば良いのですが、全てを満たす物件が出てくる可能性はそれほど高くないケースが多いと思います。
ご自身で物件探しの前に開業する物件の優先順位を整理されて、ある程度方向性が決まったらコンサルタントや業者に物件探しを依頼されると良いと思います。コンサルタントや業者に事前の希望はないが、良い物件を探してくれと言ってもなかなか良い物件は出てこないと思いますので、ご自身で情報を集め、先輩に聞いたりしながら物件を探されることをお勧めします。
一つの手段として理想とされるクリニックや先輩のクリニックなどの診療圏調査をしてもらって、その診療圏調査以上の物件を探すなど 判断基準を作ることも大切です。判断基準がないと良い物件を提案しても、その物件を判断できない方が数多くいらっしゃいます。判断基準が出来ていなければ、自分の一生も判断できないケースがありますので、判断基準を作ることも大事な開業前の準備だと思います。
そのためには情報を集め、判断基準をご自身で決められても良いですし、コンサルタントに相談しながら作られても良いと思います。
経営者になるということは決めていくということなので、判断基準を事前準備段階で作っていくことは未来に様々な影響を与えます。