資金調達
医院開業に必要な資金の調達として自己資金、親族からの借り入れ、融資があります。
「自己資金」
自己資金については、自宅などを売却して自己資金にする場合などは特別控除が受けられたりしますので、注意が必要です。 保存資料としても住民票や謄本、売買の明細資料などでてくると思いますが、詳細は会計事務所、税理士事務所へ相談していただい たほうがいいでしょう。
「親族からの借り入れ」
親族からの借り入れについては、贈与税が発生しないかが問題になります。
この場合においてはっきりとした事実関係がないと贈与とみなされる場合があるようです。
医院開業資金の融資についても、きちっと文書で金額、金利、期間、返済方法等を事業の返済能力から見ても世間の常識から見ても妥当な 計画であり、且つ間違いなくその通りに返済された事実が必要になってきます。
詳細については会計事務所、税理士事務所との相談が必須でしょう。
「融資」
借入先については、福利医療機構、や国民生活金融公庫、県のスタートアップ資金、地域の医師信用組合、民間の金融機関あたりか と思いますが、福祉医療機構については、施設数過剰地域での融資は不可。一般的に利用されているのは国民金融公庫や民間の 金融機関が多いかと思います。
国民生活金融公庫は、不動産担保があるか、ないかにより融資が変わってきます。実際には融資をおこす時点で確認が必要ですが、不動産 担保がある場合7200万円まで借入枠あり、但し、不動産評価額の5~6割程度の融資になるため現実にはその不動産の担保価値が どの程度あるかになると思います。また、すでに担保が入ってしまっている不動産は抵当権の優先順位があるため無理かと思います。
無担保融資では保証人はいりますが、1000~1500万円程度の融資はいけています。
それと土地を購入してその不動産を抵当に入れたいといった場合、国民生活金融公庫は先に抵当を入れたがりますので、注意、対策が必要 です。
また、特徴としては低利は固定金利になります。
各県のスタートアップ資金についてですが、こちらも低利の無担保融資になるのですが、自己資金の問題が出てきます。自己資金等が ないと受けられませんし、その額によっても制約がでてきます。融資が出る場合でも1000万円程度と考えていたほうがよいでしょう。
地域の医師信用組合の融資ですが、これは県によって条件が違うようです。無担保でも大丈夫であったり、不動産の評価融資を担保評価 額から減額せず全額融資OKにするなどそれぞれのようです。しかし、これは医師会入会が前提になりますので、事前の医師会調整が必要 です。もちろん診療報酬についても口座開設が出てくるでしょう。
民間の金融機関ですが、大手銀行や地銀が一般的です。この場合、銀行により、新規開業の融資商品を開発していたり、医療のチームを 設けている銀行もあります。銀行によって金利、期間や担保、条件等が変わってきますので確認が必要です。
次に留意ポイントとしては、金利、金利が固定か変動か、期間は何年か、元本の据え置き期間はあるかないか、返済方法(元金か元本か) 、担保、保証人、限度額、あとあとの取引口座の問題、など。
担保については、親族の担保提供などの可能性も検討するケースもあります。
それとよく話になるのが、医院の開業にあたり出来るだけ借入をしたくないという話で最小の借入を検討される場合です。この場合、全体投資額は抑えるべき だと思いますが、運転資金は逆に多めに借りていたほうがいいと思います。返せると思ったときに返せばいいわけですし、もし運転資金が 不足する事態になった時、金融機関はどう思うでしょう。経営がうまくいっていないんじゃないか、経営計画の見込みが甘かったんじゃな いのか、融資しして大丈夫なのか、融資の金利は高めに設定すべきかなどです。すでに銀行からみた先生は経営者としてどうかという視点 で見られるのです。
あと返済を短くするか、長くするかですが、長くしたほうが金利は当然高くなりますが、固定費は安くなり安全度が高くなりますし、返せ るときには早めに返せばいいわけですから。私見かもしれませんが、これのほうがいい医療が実践できると思いますし、無理しなくても やっていけるということになるのではないでしょうか。